朝晩の冷え込みもだいぶ厳しくなり、鍋物が恋しい季節になりました。
鍋といえば、お酒がつきものですが、これから年末に向けて何かとお酒を飲む機会が増える方もいらっしゃると思います。昔から『酒は百薬の長』などと言われますが、はたして実際のところ「くすりとお酒」の関係はどうなるのでしょうか?
お酒といっても多くの種類がありますが、アルコールが全ての酒に共通している主成分であることは疑いのないところです。このアルコールが私達の体内に入った時、様々な作用を体に及ぼし、さらには、薬の効能・効果にも影響を与えるのです。通常、私達がお酒として飲んだアルコールは、その約3割ほどが胃で、残りの大部分が小腸で吸収され血中に入ります。そして最終的には肝臓に運ばれて分解されるのですが、この時、分解反応を助ける物質(酵素)が必要になります。アルコールの場合は、ADHという酵素によって、アセトアルデヒドという物質に分解され、さらにアセトアルデヒドはALDHというこうそにより酢酸にびんかいされて、最後には炭酸ガスと水にまで処理されるのです。
ところで、アルコールの代謝物であるアセトアルデヒドですが、実はアルコールの数倍も強い生体反応をおこす有害な物質です。吐き気・悪心といった二日酔いの症状や呼吸促拍・心悸亢進なども引き起こしたりします。しかし、困ったことに私たち日本人の場合は、人種的に欧米人と比較するとアセトアルデヒドを分解するALDHの働きが弱いのです。その為、飲みすぎるといつまでもアセトアルデヒドが体内に残り、悪酔いの状態が続くという事があるわけです。ちなみに、体重60kgの平均的日本人が、一時間に処理できるアルコールの量はわずか6.6gと言われてますので、ビール1本あるいは日本酒1合を処理するには、おおよそ3時間かかることになります。そして、肝臓で分解されるまでの間に、血中に溶け込んだアルコールは体内を循環し、種々の生理反応に関与します。お酒に酔って、顔が上気したり、体が温かく感じるくらい血行が良くなったり、普段は無口な人が、ひどく陽気になったりするのは、アルコールが血管や脳に作用した結果なのです。このような体に影響を与えるアルコールと『薬』が、同時に体内に存在した場合、お互いに作用し合うことは容易に想像できることです。
幾つか例をあげれば、一部の抗うつ剤では、薬の作用が強く出るようになります。又、解熱鎮痛剤では胃腸障害が起き易くなりますし、降圧剤では、アルコールの影響で作用が強く出たり、逆に弱まったりする薬があります。糖尿病薬では、重篤な低血糖を起こす可能性が考えられます。いずれにしても、何らかのお薬を服用している間は、その薬とアルコールとの関係には、十分に注意を払うことが大切です。
忘・新年会シーズンに突入した今、お酒があなたにとって『百薬の長』となるよう上手な付き合い方をチョットだけ考えてみて下さい。