スピード、エス、コーク、エクスタシーは、ファッション的な感覚で呼ばれる乱用薬物の俗称です。覚せい剤、コカイン、大麻、LSDなどは、きれいにやせる、疲れがとれてスッキリするという、巧妙な誘惑で身近な友達が勧めることがあるかもしれません。
しかし、こうした薬物は法律によって使用したり、所持することも禁止されています。危険な薬物の乱用によって、脳をはじめとする身体的障害や、精神的障害があらわれます。人格が暴力的になったり、反社会的になる一方で無気力、思考力や記憶力の欠如、幻聴、幻視が生じることもあります。治療して治ったようでも、幻覚や妄想が再燃し、フラッシュバックが起こったりするので、薬物乱用の害は一生続くことになるのです。薬物(ドラッグ)という語は「知覚や気分、あるいは他の精神状態を変化させるために、用いられることのある、天然あるいは合成の化学物質全般」と定義されています。この中には、身体的な不調を治療する各種医薬品は含まれていません。この定義によれば、アルコールも薬物ということになります。また、タバコも猛毒のニコチンが含まれており、惑溺性の強いものもあります。
国連のレポートによるデータは、これまで一度でも薬物乱用を経験した者の割合は、米国で10歳から20歳台の青少年で57.5%、英国では28%にのぼり、日本での推定2%未満と比較すると、いかに深刻であるかがわかります。今、各国に共通していることは、薬物乱用が拡大していることです。
最近、日本でも覚せい剤の乱用により、補導される青少年の数が増加するなど、児童生徒の薬物汚染の実態が極めて憂慮される状況となっています。
タバコ、アルコールを含む依存性の薬物乱用のきっかけは十代で起きます。この時期は、発育、発達過程にあるため、薬物の影響がより深刻なかたちであらわれます。また、女性は薬物依存になりやすい傾向があるようです。さらに、妊娠中には、薬物を乱用する母親の胎内は、いやおうなしにその影響を受けるので、中毒や脳障害などが懸念されます。
実際、薬物汚染は都市部に限らず、どの地域でも起こり得る問題となっています。従って、地域での薬物乱用防止の教育や、啓発運動に加えて、児童生徒が医薬品をはじめとする薬の正しい知識をもつことも、乱用防止につながります。文部科学省は薬物汚染の低年齢を危惧し、2002年度からは新学習指導要領で、はじめて小学生にも薬物の危険性や、乱用予防教育を実施するとしています。