日本の医薬分業(病院や診療所で診察を受け、薬局でクスリを受け取るシステム)が近年急速に進んできました。この背景には国民医療費の抑制と、複数の医療機関を掛け持ちして受診する患者さんのクスリの飲み合わせによる副作
用を未然に防ぐためのダブルチェックを行うという意味があります。
記憶されている方もいると思いますが、癌患者がヘルペスに罹患し、抗ウイルス剤を併用して十六名の死亡者が出ました。これは、内科で抗がん剤をもらい、自分が抗がん剤を服用していることを告げずに(告知されていない?)、皮膚科でヘルペスのクスリを服用して起きた悲劇で、どちらのクスリの添付文書にも併用禁忌と記載してありましたが、患者さんからの申告がなかったのです。このようなことがあって、医薬分業は急速に進展してきました。
ところで、お医者さんからもらった処方せんはどこの薬局に持っていっても良いのでしょうか。答えはイエスです。問題は消費者の皆さんが調剤してくれる薬局かどうかの判断がつきにくいのが、今の薬局・薬店だと思われます。「クスリ屋」と一口に言っても、薬局・一般販売業・薬種商などの種類があり、調剤ができるのは「薬局」だけです。厳密に言うと薬局の中の保険薬局(ほとんどの薬局)だけなのです。今のところ保険薬局を探す目安としては「処方せん受付け」などと書かれた黄色のステッカーや看板があるところが調剤をしている薬局です。ただこれだけでは調剤ができる薬局というだけで、私たち薬剤師が望んでいる「かかりつけ薬局」としては、不足している面があります。というのは、複数の医療機関に通っている患者さんが近くの薬局ごとにクスリを受け取っていては、相互チェックができにくいからです。患者さん自身の「かかりつけ薬局」をもって初めて可能になるのです。薬局は患者さんごとに薬剤服用歴管理簿を作成して、副作用歴や相互作用のチェックをしています。ですから、どこの医療機関の処方せんでも自身の「かかりつけ薬局」を選ぶ際のポイントは「クスリの説明をきちんとしてくれる」「気軽に相談できる」「必要に応じてクスリの情報をくれる」「信頼できる薬剤師がいる」ことです。皆さんも近所に自分の「かかりつけ薬局」をもって上手に薬局を活用しましょう。